なぜ水通しをするのでしょう

なぜ水通しをするのでしょう

リネン生地で制作する場合、水通しは重要な工程です。天然繊維であるリネンは必ず縮みます。 サイズがおおまかなものをつくる場合や、目の粗い生地など糊をはったままの方が扱いやすい場合は縮みを考慮して大きく作ったり、そのまま縫ってもかまいませんが、そうでない場合は、あらかじめある程度までは縮ませてから裁断することをお勧めします。

◇ 裁断した後の縮みをなるべく少なく

生地の地直し

織り機では直角に交わっていた縦糸と横糸も、さまざまな工程を経るとゆがみが生じます。そのまま縫製してしまうと、ひねりが加わるなどの不具合が起こります。 そこで、水通しをして癖をほどいてから、アイロンでなるたけ直交するように生地をならします。

お化粧を落として本来の風合いを取り戻す

生地を織る段階でスムーズに作業が進むように、機にかけられる糸には糊(のり)がついています。 そのため、織りあがった生地や縫製された製品には、お化粧の糊がついてピンとはったままです。また、生機(きばた=織り機から外したままの生地)の無漂白・未晒し生地にとっては、灰汁(あく)を抜くための重要な作業でもあります。 本来の風合いがいきるアイテムや、ナイトウェアに袖を通す前などには、水通しをして、糊を溶かしだしましょう。

しかし、水通しは適した方法で行わないと、せっかく選んだ生地がだいなしになってしまいます。どのようなことに注意すればよいのでしょうか。

◇ 水通しは、洗濯機や浴槽などでゆっくりと行います

洗濯機で行う場合

きっちりと折りたたんだまま洗濯機に入れたり、生地のボリュームに対して少ない水量で行うと、生地が十分に浸らなかったり、部分的にこすれたりすることがあります。すると、縮みむらが生じたりたたみ角で色落ちしてしまいます。 生地が泳ぐくらいのたっぷりの水に数時間つけおき(つけおきコースなど)、その後普通に洗濯して、軽めに脱水します。

リネンの水通し

(左)水が少なくきっちり畳んだまま (右)おった部分で白く色が抜けてしまった状態

リネンの水通し

生地が泳ぐくらいたっぷりの水で

小さなものなら洗面器やボール、大きなものなら浴槽へ

大きめの生地は、洗濯機の水量を最大にしても充分にできるかどうか心配です。そこでおすすめなのが、洗濯機よりも水量の多い、浴槽に浸ける方法です。ぬるま湯につけると、糊が溶け出しやすく、より効果的です。ナイトウェアやベッドリネンなど肌に触れるアイテムにも向いています。お風呂の残り湯を利用してもよいでしょう。 ひと晩つけて次の日の朝、すすいで絞るか、洗濯機をまわしてから軽く脱水します。

なぜ水通しをするのでしょう

大きめのものは浴槽へ

水通しはお湯で行う場合も多いため湯通しとも言われ、湯通しを請け負うプロもいます。プロが行う生地への加工には「湯のし」もあります。「湯のし」とは蒸気を吹き付けてからアイロンでおさえて、生地のゆがみを直したり収縮させたりする加工です。単独でも行われますが、水通しにプラスすることにより、さらに布地が安定します。

◇ 地直し

仕上げにアイロン

すすぎが終わったら、シワにならないよう軽めに脱水して、日陰で干します。 そして、効果が出やすいよう、生乾きのうちに地直しをします。 ゆがみが大きい場合は、縦方向や斜め方向に引っ張って整えます。 布目をよく見て、縦糸と横糸が平行になるように、アイロンをかけて整えていきます。

 なぜ水通しをするのでしょう

乾燥機にかけてみたら…

水通しや洗濯をして、いざ干す段になると、おっくうになることもある大判のシーツやブランケット。じめじめした日、乾燥機にかけてしまった…リネンバードスタッフに意外と多い、リネン生地でも乾燥機にかけてしまう派。 乾燥機にかけると、びっくりするくらい縮んでしまい、数年先まで使い込んだ後のような風貌になります。新品のものでもくったりとしたリネンらしい柔らかさも味わえます。つまりは繊維を傷めているということなのですが。(あくまでも裏技、おすすめはしません…) 実際に、リネン工場でも、生地をソフトにする仕上げ加工として、似た方法が行われています。


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